【CIIDの授業】03. People Centered Research 口に出されていない事は何か?ストーリーと行動観察から人の潜在ニーズを探る

CIID

人の行動を設計してはいけない。人の行動に沿って設計するべきだ。

Don Norman, the director of The Design Lab at University of California

前回の投稿:インタラクションとは何か?で、「インタラクションデザインとは、人間の身体・思考・感情のニーズを中心に捉え、人間と対象物とのインタラクションを設計する領域」と述べた。
人間を中心に捉えたデザインを行うには、まずは対象となる人のニーズを捉える必要がある。

CIIDが提唱するデザインプロセス全体像。デザインプロセスは、人のリサーチから始まる。

現在多くの企業がユーザーの声を拾うために採用している手法は、以下のようなものだ:

上記は何れもユーザーの声を把握する上で重要な手法である一方、以下のような課題が存在する。

  • 人は自分の欲求を常に自覚しているわけではない
  • 普段と異なる環境だと人は緊張したり格好つけたりするため、本音を引き出しづらい
  • 質問内容の偏りや質問者の誘導により、回答結果にバイアスがかかりやすい

そこで、人の実際の生活を観察しながら情報を集めていくリサーチ手法がPeople Centered Research。

People Centered Researchでは、人々が生活する現場に出向き、普段の行動を観察したり、もの・ことを利用している最中にインタビューを行ったり、一緒に必要な要素を考えてもらったりする。

ジョギング中の人にインタビューを試みた「The Runners」

People Centered Research 手法の強み:

  • ユーザー自身も気づいていない潜在ニーズの発見
    • 普段の行動・それを支える価値観・ 環境が与える影響を深く探っていく事で、ユーザー自身も認識していなかった潜在的なニーズの発掘に繋がる
  • 生きたストーリーの共有
    • ストーリーで語られた事は人の記憶に残る。つまりチーム内外の人に伝えた時に理解・共感されやすく、行動を促しやすい
ユーザーが無意識にとっている行動の例。
紅茶のティーパックの紐が中に落ちないようにカップの取っ手に巻き付ける・・など。

People Centered Researchでは主に以下の3つの手法を用いて、潜在ニーズを探っていく。

  • インタビュー – 生活の”ツアーガイド”実施中に価値観を深掘り
    • リサーチ対象者に生活のツアーガイドをしてもらいながら、自分のストーリーを語ってもらう。「自分の声が聞かれている、興味を持たれている、役に立っている」と感じてもらう事がまずは重要なので、誘導・比較・判断は厳禁。ストーリーに耳を傾け、感情が動いたポイントをメインに深堀をしていく。普段の行動を支える価値観は何なのか?5 Whyも有効。
  • 観察 – 言っている事よりも、やっていることに着目
    • できることなら、もの・ことの利用シーンを見せてもらおう。行動・表情・ボディランゲージからも行間を読み取り、真意を観察すべし。
    • 動画を撮り、細かいところまで観察すべし。誰が関わっていたか、何に対してどんな行動をとっていたか、時間の経過とともに何が起きたか、どんな感情が見えるか?
  • セッション – 各種ツールを用い、無自覚・曖昧な考えを明確化
    • 以下のようなツールを用いて価値観を探ると、語っている事との差異が明らかになる事も。
      • カード並び替え:カードに書かれた内容を、優先順に並べ替えてもらう。曖昧なトピックを扱う際に有効。
        (e.g. スーパーで商品を買う際の優先項目:「価格」「オーガニック」「ブランド」「おいしさ」「パッケージ」「利便性」)
      • マッピング:マインドマップのように、与えられたテーマで思い浮かんだものごとを自由に関連付けてもらう。ユーザーにとっての関連性を理解するのに役立つ。
        (e.g. 「直近1週間 / 1日で関わった人」の分類と関連付け)
      • タグ付け:「役立つもの」「嫌なもの」といった物理的なタグを用意し、身の回りのものにペタッとタグ付けしてもらう。ユーザーが重要と感じている要素を理解するのに役立つ。

また、リサーチ対象の選定も非常に重要である。PCRは1人1人のストーリーを深く追っていく手法のため、得られるデータに(誘導尋問とは逆の意味で)強いバイアスがかかる事は必至。極端なユーザーストーリーを基に突っ走ってしまわないよう、リサーチ対象を絞りすぎない事も重要。ライトユーザーからヘビーユーザー、過去のユーザー、非ユーザー、業界の専門家など幅広く対象者を選定し、一般的には1つのペルソナにつき5名程リサーチができると良いとされている。

オープンクエスチョンで好き勝手にストーリーを語ってもらうPCRで得られるデータは千差万別。次回以降、これらのデータからデザインで解くべき課題・機会を発見していくプロセスをまとめる。

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